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September 05, 2004

棚から哲学

土屋賢二,「棚から哲学」,文藝春秋,2002年.

しばらく稀代のエッセイスト,土屋賢二本が続きます.
あぁ,すばらしき詭弁の数々.

だれにも聞かれないまま勝手に答えるが,わたしが文章を書くとき座右の銘にしている格言が2つある.一つはサマセット・モームのことばで,「よい文章を書 く秘訣は3つある.だが,だれもそれを知らない」という者だ.文豪でさえ秘訣を知らないのだ.この点では,わたしは文豪と同レベルである.これほど勇気づ けられることがあるだろうか. (p.128)
だが,なぜ損をしてはいけないのだろうか.他人に迷惑をかけているわけではなく,むしろ喜ばれているのだ.ソクラテスは「加害者 になるよりは被害者になれ」と主張したし,キリストは「左の頬を打たれたら右の頬を出せ」と説き,わたしは「左の頬も右の頬も打たないでほしい.どうして もというなら力いっぱい打たないでほしい」と希望した(三人とも被害者である点が共通している.ソクラテスもキリストも最後は死刑になったのが不吉であ る).わたしに害を加えることしか頭にない者たちには,深く反省してもらいたい.(p.148)

Posted by ysk5 at September 5, 2004 05:41 PM