« 研究室ぬみ会 | Main | ちょっきんのtodo »

September 30, 2004

インストール

綿矢りさ,「インストール」,河出書房新社,2001年.

”17歳の気持がいっぱいでした”というよりかは,”綿矢りさ”って感じだ.
この人は自分を書くのだろう.もしくは今のところ自分しか書けないのかも.

まだお酒も飲めない車も乗れない,ついでにセックスも体験していない処女の17歳の心に巣食う,この何者にもなれないという枯れた悟りは何だというのだろ う.歌手になりたい訳じゃない作家になりたい訳じゃない,でも中学生の頃には確実に両手に握りしめることができていた私のあらゆる可能性の芽が,気づいた らごそっと減っていて,このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うとどうにも苦しい.もう17歳だと焦る気持ちと,まだ17歳だと安心する 気持が交差する.この苦しさを乗り越えるには.分かっている,必要なのは,もちろんこんなふうにゴミ捨て場へ逃げ出すのではなく,前進.人と同じ生活をし ていたらキラリ光る感性がなくなっていくかもなんて,そんなの劣等生用の都合の良い迷信よ,学校に戻ってまたベル席守ることから始めなさい!光一口調で自 分を叱ってみたが,しかし,やっぱり私は動けなかった.自分にほとほと呆れ,仰向けになってさびれたコンクリートの四角の切れはしからのぞいている暮れか けの空を見上げる. (p.17-18)
何が変わった?何も変わらない,私は未だ無個性のろくでなし.ただ,今私は人間に会いたいと感じている.昔からの私を知っていて,そしてすぐに行き過ぎて しまわない,生身の人間たちに沢山会って,その人たちを大切にしたいと思った.忘れていた真面目な本能が体の奥でくすぶっていた. (p.115-116)

Posted by ysk5 at September 30, 2004 05:35 PM