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November 30, 2004

神様のパズル

機本 伸司,「神様のパズル」,角川春樹事務所,2002年.

メッタ斬り!関連.
第3回小松左京賞受賞作品.

僕が物理が嫌いなのは納得いかないし,納得することを強いられるからです.

物理は未完成なのだ.いまだに十分納得できる答えを与えられないでいるというのが真実だ.にもかかわらず,理論物理学者は,勝手な自説を発表する.
一方,我々受け手は,偉い人が考えたのだから間違いないと信じてしまう.相対性理論,量子力学と聞いただけで,そういうものだと思ってしまう.
しかし,”宇宙は無から生まれた”という,なかば常識化した説も,反論の余地のない理論が登場すれば1日でひっくり返る.”人間に宇宙は作れない”という考え方だってそうだ.何故なら,最も根本的で単純な疑問がいまだに解けないままだからだ.
物理が正しいというのなら,とことん突き詰めたところまでさかのぼって,正しさを証明しておくべきではないのか?それがあやふやなままで,その他が正しいと言われても,信用するわけにはいかない.
(p.65-66)

このアプローチの表現はどっかで使えそうだな.
「宇宙はどのようにして始まったのか---.それを理解する1つの方法として,宇宙が自分たちに作れるかどうかを考えてみるとい
い.コンピュータが分からないという人でも,一度自分でコンピュータを作ってみると分かるようになる.それと同じだ.誰も宇宙を作ったことがない.だから
いつまでも分からないのだ.宇宙の作り方を考えることは,宇宙を知る近道になると私は思う.確かに人間にそんなものが作れるわけがないかもしれない.しか
し研究してみる余地はあるだろう.作れないと主張するのであれば,なぜ作れないのかを研究し,それがばかげた考えであることを証明してみせるべきだ」
(p.67-68)

”勉強なんでするの?しなくてもいいじゃん”系の文句・意見に対する回答としてつかう.
「じゃあ勉強は何なの?何のためにしているの?」と,鳩村先生がたずねた.
就職のためとか,将来のためとか,月並みな答えが返ってきた. 穂瑞は,「知りたいから」と答えた.先生は大きくうなずいた.
「私もそうね.答えが知りたいからよ」 「この宇宙についてですか?」と,相理さんが質問した.
「いいえ,”自分”についてよ」先生ははっきりとそう言った.
今度は穂瑞がうなずいていた.「”自分とは何か”---.前にも言ったかもしれないけど,私が本当の知りたいのは,そのことなの.自分の今抱えている問題
を解決したいために,自分を取り巻く宇宙のことを調べているわけ.少なくともうちの学校でするような勉強は,本来そのためのものじゃないかしら.けど,そ
れがいまだに分からないからこうして研究を続けているの」
(p.176-177)

Posted by ysk5 at November 30, 2004 10:11 AM