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February 15, 2005

森戸 and 逆瀬川(2000)

森戸 晋,逆瀬川 浩孝.「システムシミュレーション」.朝倉書店,2000年.

OR(Operations Research)erな向かいの研究室のセンセがお書きになられたご本.
Gilbert and Troitzsch(2003)の補足経由で.

最初はこんなように講義で教わったような気がする.
いまは下のようには思っていませんが.
この定義は,この本の中では有効だけど,明らかにぼくらが使う意味を示していない.

利用目的でシミュレーションを分類すると,(1)システムの設計時の性能評価,すなわち,設計案を比較検討するための主として設備の能力評価,(2)システムの制御方法の検討,(3)システムの運用時の短期的先読み,の3つに大きく分けることができます.
森戸 and 逆瀬川(2000) pp.10

Takahara(2004)にもあるようなお話ではあるのだけど,こちらのほうが専門的な言い回しをしていないので,読みやすいとも言えなくもない.
僕からすればもう少しつっこんで書いていただきたかったところである.


(1)手軽さ:シミュレーションは,モデルを使った分析技法のなかで一番手軽といってよいでしょう.シミュレーションの要素技術は幅が広いのですが,最近
ではそれらのブラックボックス化が進み,ユーザーは詳細を知らなくともそれなりに技法を使うことができます.最近では,プログラミングを必要とせず,モデ
ルという意識すらもたなくてよいシミュレータも少なくありません.しかし,これは正しい使用法を知らずに間違った使い方をするというリスクと背中合わせで
あることも意味します.
(2)柔軟性:モデル分析技法の中でも,シミュレーションは高い柔軟性(flexibility)を誇っています.離散型シミュレーションの場合,待ち行
列型モデルという制約はあるにしても,モデル作成者の思うがままにモデル作りが可能です.他の数学モデルでは,例えばすべて線形の関係でなければならない
とか,変数は連続的に変化するなどの条件が存在することが多いのに対して,シミュレーションでは言葉で正確な表現可能な条件ならほとんどすべてモデル化可
能です.裏返せば,自由度が高すぎて,どうすればよいか分からないという問題も含んでいると考えてください.
(3)説明の容易さ:アニメーションにも助けられて,モデルならびにそこから得られる結果は,簡単かつ説得力をもって説明することが可能です.したがっ
て,うっかりするとだまされるという危険もはらんでいます.
森戸 and 逆瀬川(2000) pp.15-16
本来的にはこの記述を読みたくてこの本を読
んだのだけれど,読んでみたら,ハイそうですか的な感じのところだったので,あんまりメモる意味がないかもしれないけれど念のためメモっておく.
モデリングを行うときに,問題状況をモデルとして認識する世界観としてのワールドビューによって,モデル化のしかたが異なるというはなし.パースペクティ
ブを事象におくか,プロセスにおくか,アクティビティにおくかによって,それぞれ完成したシミュレーションモデルにおいて長所と短所が存在しますというこ
と.
以下では,前節で説明した基本概念を用いて,代表的な3つのワールドビューを説明します:
(1)事象中心のモデル化:システムの状態変化を起こす出来事,すなわち”事象(event)”に着目し,事象がシステムの状態に及ぼす影響を明確に定義
することによってシステムを記述するもので,私たちがCやVBなどを使ってシミュレーションのプログラムを自分で作る場合に,通常採用するモデル化のアプ
ローチです.
(2)プロセス中心のモデル化:システム中を動き回る要素に着目し,要素の誕生(または到着)から消滅に至るライスサイクルのプロセスを定義することに
よってシステムを記述するもので,SLAMをはじめ多くの商用ソフトウェアが採用しているモデル化のアプローチです.
(3)アクティビティ中心のモデル化:要素にかかわるアクティビティに着目することによってシステムを記述する方法で,要素間の複雑化相互関係をモデル化
するのに有効といわれており,欧州とくに英国で好まれています.
森戸 and 逆瀬川(2000) pp.101

Posted by ysk5 at February 15, 2005 10:15 PM