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June 01, 2005
西部(2002)
西部 忠.”進化主義的な制度設計”.社会・経済システム.No.23,pp.66-72,2002.
この論文ではreferenceが示されていないという,なかなかに個性的な感じですが,面白かった.
構築主義と操作主義に対して批判を加えて,進化主義的な制度設計の方法について,とくに貨幣というメディアの特性から検討している.
方法論的個人主義の説明.
確かに,このようにいうことができるよな,と思った.門外漢ゆえに,方法論的個人主義のオリジナルを意味を知らないのが痛いところではあるが.
1)「原始的構成要素の同定可能性」:現実世界は,それを構成するもっとも基礎的な要素(個人や企業などの経済主体)へ分解・還元することができる.これは「要素還元主義」,経済理論の文脈では,「方法論的個人主義」に相当する.
西部(2002) pp.66
この考え方は面白い.というか,ぼくは明らかに前者の考えで思考停止していた.
が,地域通貨というのをとくに考えたときには,確かにこのような思考が必要であろうということが,この文を読めば理解できる.
結局,貨幣の注目すべき特性は,単に財やサービスの交換を媒介するというところにはない.交換という本来は一段階の二者間の相互行為(直接交換)を,二段
階の三者間の関係(売買)に置換し,モジュール化することにある.これは,分権的な調整行動にもとづく分散型ネットワークを可能にする.「経済主体が交換
を効率的に行うために貨幣という道具・客体を生み出した」のではなく,「貨幣が経済主体に売買という特定の行為を行わせることで市場を創り出す」というべ
きである.貨幣や,市場の「形成者」として経済主体間を動くもう一つの主体である.したがって,貨幣のメディア的特性は,経済主体の内的特性をも変えてし
まう.構築主義と操作主義は,媒体のシステム生成作用や経済主体の内的特性変形作用に着目していないのである.
西部(2002) pp.70
メディアが関係や意識というものを規定する,という考えは確かに同意.
これについてはさいきんとみに感じていることでもある.
地域通貨は,構築主義や操作主義における政策手段(ツール)ではなく,進化主義の立場から経済社会システムを進化的に調整し,望ましい方向へと誘導するた
めの戦略的な制度設計媒体(メディア)である.特定の目標を達成するための目的合理的な「ツール」の有効性よりもむしろ,人々の関係や意識を根本的に規定
する「メディア」の進化的特性に注目すべきである.
西部(2002) pp.70
Posted by ysk5 at June 1, 2005 10:51 PM
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