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October 09, 2004

高橋(2000)

高橋 真吾,”システム理論からの組織論へのアプローチ-組織学習の進化的システムモデルの枠組み-”,組織科学,Vol.34,No.2,pp.59-68,2000.

久々に読み返してみたが,いやぁ,いいことかいてありますね.
するめのような論文は素晴らしい,というのは比較的合意が得られそうな話だと思いますが,センセの論文はまさにそれ.

この枠組みの上で,組織学習の過程は次のように行われる. (1) individual single-loop learning 各エージェントが自己の内部モデルを参照して意思決定する過程である. (2) individual double-loop learning 各エージェントが状況からのレスポンスに基づいて自己の内部モデルを修正する過程である. (3) organizational single-loop learning 各エージェントの行動の集合による組織としての行動である. (4) organizational double-loop learning 各エージェントの内部モデルの共有化の過程である. (pp.63)
これを他の研究者の定義と比較する.
Individual double-loop learningでは各エージェントに独立に自己の内部モデルを修正する.しかし,中立的な”正しい”モデルが存在してそれとの差を縮小するといった通常 のコントロールの概念に沿った方法で修正することはできない.すなわち状況の”正しい”モデルを知らずに各エージェントは自己の内部モデルを修正しなけれ ばならない.さらに,修正された内部モデルが”正しい”かどうかの判断も基本的にはできない. organizational double-loop learningはさらに困難な過程のように見える.エージェントのネットワークにおいて内部モデルが共有されるとは,最も狭い意味では,各エージェント の持つ内部モデルが一致することである.各エージェントは自己の内部モデルを明示的に他のエージェントに示すことはしない.したがってエージェントのネッ トワークにおいてある一つのモデルが共有されたかどうかを各エージェントが個別に判断することは,内部モデルの比較という方法ではできない.内部モデルの 共有化は各エージェントの内部モデルの修正の結果として得られる.すなわち有効なorganizational double-loop learningの方法は,内部モデルの共有化を導くようなindividual double-loop learning,内部モデルの修正方法ということになる. (pp.64)
この文なんて,すごい.尿漏れもの.
本論で提示したdouble-loop learningに対する進化的方法は,組織学習の具体的な過程の一つのモデルとなるものである.しかしながら,それがどのように組織構造の変動と関連し ているかわかりにくいという見方もあるかもしれない.これに対する現段階での回答は次のようなものである.本論での枠組みでは組織は内部モデルを持った エージェントのネットワークにより表現される.その構造は,各エージェントの内部モデルの構造とエージェント間のネットワークによる相互連関による構造に より与えられる.double-loop learningによる内部モデルの変化は内部モデルの構造を変化させることであり,内部モデルの共有化はエージェントネットワークの構造の変化に関連し ている.進化的方法はこれらの変化を各エージェントが自律的にすなわち構造を変化させるためのコントロールセンターに依存することなく行う過程を明らかに してくれるだろう. (pp.67)

Posted by ysk5 at October 9, 2004 10:02 PM