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October 20, 2004

サプライチェーン・デザイン

チャールズ・H・ファイン,「サプライチェーン・デザイン」,日経BP社,1999年.

本書はイノベーションのジレンマのダイナミクスをサプライチェーンの観点から整理したものであると考えることができると思う.

この辺のとらえ方は,まさにそれ.


イソップ物語の教訓は尊重すべきだが,亀がウサギに勝つことはめったにないということを認識する必要がある.「どんな優位も一時的」というビジネス環境で
は,ライバルよりも速く進化できない企業は必ず取り残される.産業界のショウジョウバエは,こんなことを教えているのだ.衰退する能力や優位にいつまでも
こだわらず,新しい最も優れた能力を選択し,たとえ短期間であろうと何回でも優位を求め続けなければ勝利をつかむことはできない.
(p.56)

モジュール化と統合化のはなしが出始めたのも,この時期からなのか.

ビジネスの二重らせん構造は,こうした縦と横の動向が企業や産業界,ときには国家経済の運命まで左右することを示している.内部と外部の力---ニッチ市
場における競合企業,多くの製品に関わる一定技術水準の維持,市場競争で優位に立つ企業によく起こる組織の硬直化など---は,縦に統合された企業のつな
がりを解体して横並び構造にかえる.その一方で,横並び構造になると優位に立つ部品メーカーの影響力や個々の企業による特殊技術の開発に刺激されて,企業
のつながりを縦に再統合しようとする圧力が強まる.

イノベーションのジレンマでは技術開発ベースで事業を考えるが,ここではサプライチェーンベースのアライアンス関係とかでとらえるのね.
「つくるか,買うか(製造/仕入れ)」の理論は,問題が複雑なのでかなり込み入っている.当然その答えも単純ではない.しかし,次に示す4種類の依存関係から成る4次元マトリックスを検討すれば,製造/仕入れ問題の本質を把握できるだろう.
・技術的な依存関係(統合化か,モジュール化か)
・組織的な依存関係(統合化か,モジュール化か)
・時間的な依存関係(クロックスピード,二重らせん構造の周期)
・競争上の依存関係(サプライヤー層の厚さ)(p.205)

面白いのだけど,肝心のクロックスピードの構成要素(要因)の記述がイマイチ.
というか総合的・直感的に計測するしかないのか,結局.
でもこれじゃ事象は説明できるがメカニズムは分からない.

クロックスピードの測定も原価計算と同じように複雑である.それに,ここで発表するために過去数十年にわたって測定を続けてきたというわけではない.ク
ロックスピードの測定はまだ始まったばかりなのだ.例えば,自動車産業における製品のクロックスピードは,モデルチェンジの頻度(ホンダはアコード・セダ
ンを4年ごとにモデルチェンジする),設計の主要部分に変更が加えられる頻度(エンジンやボディー,駆動系など),オプション・パッケージを変更する頻度
(モデルチェンジに含まれる場合が多い)などで測定することができる.同じように製造技術についても,主要な製造/組織パラダイムを導入する程度(大量生
産,リーン生産など),工場や設備の使用年数,工場への新しい製造技術の導入などによってクロックスピードを測定することが可能だ.組織のクロックスピー
ドは,CEOが交代する間隔や組織の再構築,オーナーの交代などを評価基準として測定する.
(p.311)

Posted by ysk5 at October 20, 2004 10:45 AM