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November 28, 2004

後宮小説

酒見 賢一,「後宮小説」,新潮社,1989年.

メッタ斬り!関連.
面白い.グングン読めるし,これはグングン読む作品だと思う.
しかし,確かに処女作でこんなのを書いてしまうと大変そうな感じです.

今まで”こうきゅう”のことを”ごきゅう”と思っていたことは内緒で.
# 音音の組合せだし,音で知らないと不可抗力とディフェンスしてみる

小説とか物語とかへの言及.

だが,敢えて筆者は,銀河は,と書き出さざるを得ない.小説という形態が,所詮は事実に及び難いという諦めであろうか.あるいは,小説は事実に近付くべき義務など最初から持ってはいないという確認としてか.とにかく.
(p.19)

「つまりこういうことです.快楽を感じているとき,それが手先やら舌先やらの末端だけのものなら,その感覚を安易に信用してはいけないし,逆に苦痛を受け取ったとしても信用してはいけないということですね.こころが快を得ているときだけが真実なのです」
(p.123)

この記述はどこかで使えそうな感じ.

古い説話にこういうものがある.人の心は太古は生命力の混沌とした沼であった.生の欲求が時々ぼこっと浮かんできて泡になる.その泡が弾けて,泡の中に詰
まっていた気(ガス)を吸うことによって人は生命の要求を知るのである.
しかし,人が社会を作り,人と人との関係のうちに生きるようになると,常識,規範といった形式を必要とするようになり,必ずしも渾沌の沼には従わなくな
る.その形式は渾沌とした沼の上に建築される危うい建物である.沼が揺らぐと建物も大きく揺らぎ,時には倒壊してしまう.素乾の滅亡も素乾の形式あるいは
儀式の倒壊であるといえる.
(p.258-259)

Posted by ysk5 at November 28, 2004 02:33 PM