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January 20, 2005
安藤(2001)
安藤 史江,「組織学習と組織内地図」,白桃書房,2001年.
組織学習についてのエクセレントなレビュー.
いままでのレビュー論文の中でも屈指の出来.
僕は1985年くらいから1990年くらいにかけてのものしか読んだことがなかったので,3系統への分岐について理解できていなかった.
文系のドクター論文はすばらしい(文献の勉強量が).
さて,中身をメモと.
3系統への分岐の記述.
その際,従来,既存研究はいずれも組織学習研究として大きく一括りにされていたが,本書では,その議論前提の違いからそれらを3つの異なる系統に区別する
必要性を見出した.その3つとは,組織ルーティンの変化を研究対象とするMarch系,アンラーニングを研究の中心に据えるHedberg系,そして,組
織介入による組織変革を研究するArgyris系のことを指す.
(pp.9)
組織学習自体の定義はじつはなかなか見かけないのでメモ.
ここまで,組織学習論の2つの系統,Hedberg系とArgyris系の代表的な研究を概観してきた.その結果,両者とも,組
織学習は組織の価値観や知識を発展させていくプロセスであること,そのプロセスにおいて組織文化のあり方は組織メンバーに影響を与える重要なものと認識さ
れているという共通点の存在が読みとれた.(pp.76)
さて,ここでぼくらの研究ですよ,っと.
Argyris系の議論に不足しているもう1つの点は,結論の一般化・普遍化があまり図られていないという点である.事例分析か
ら導き出した結果は,その1つ1つは重要だが,それを一般的な結論として他の事例にも活用できるかとなると疑問である.Argyris系の組織学習論にお
ける事例分析からの事実発見は,調査対象とした企業に特有の条件と密接に関係していることも多い.この問題点を解決する方法として考えられるのは,質問票
調査を通じた統計分析を,理論構築や事例分析などと併用することである.そうすれば,そこから導かれ確認された結果は,十分に一般化・普遍化できるもので
あると考えられよう.たとえば,本書のように,組織メンバーの物事についての受け止め方の差異や,その差異が組織行動に及ぼす影響を見ることを重要と考え
る場合,組織メンバー1人1人を対象とした,このような質問票調査は有用であると考えられる.(pp.81)
高次学習をどのレベルでの学習ととらえるのかというはなし.
Argyrisのはあるいみ自由度の高いとらえかたが可能ですよと.
論者間で想定する高次学習の中身がどのように異なるかをまとめたのが,図表3-3である.特に,Fiol &
LylesとDuncan &
Weissの議論を比較すると,同じ「高次学習」という言葉でも,想定する中身には顕著な違いがあることが明らかになる.学習に関わるメンバーの数も違え
ば,組織学習の結果が組織に与えるインパクトの大きさも違う.ここで,第2章で作成した組織学習論の3系統を比較した表を思い出してみよう.たとえば,
Hedberg系の場合,企業の方向性に関する高次学習のみを想定していたが,Argyris系の場合は企業の方向性だけでなく,より具体的に個々の仕事
にかかわる高次学習も想定していた.このように,企業の方向性に関するものと具体的な仕事に関する高次学習とでは,その規模も社内に与える影響力も違う.
従来はこれらの高次学習はすべて一括して考えられていた.だが,本研究のように組織メンバー側の視点にたって組織学習現象をとらえようとする場合,両者の
区別は必要である.組織メンバーの物事の受け止め方の違いによって,実現できる高次学習の中身もはっきりと分かれるかも知れないからである.
(pp.98-99)
Posted by ysk5 at January 20, 2005 01:11 PM