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February 11, 2005
亀田(2000)
亀田 達也.”協同行為と相互作用---構造的視点による検討” in 協同の知を探る---創造的コラボレーションの認知科学(植田 一博,岡田 猛
Eds.).共立出版,2000年.
最初は逆問題についての解の収束プロセスと絡められたらいいなと思っていたのだけど.
ともかく面白かったのでメモ.
GAプロセスを合意形成過程と等価とするアイディアについて.
協同して学習を行う際のその有効性としての選択のしくみを,協同学習システム設計者の側から,どうやって保証するかというはなし.
さて,楠・佐伯(1999)の主張する「非合意形成的協同学習システム」も,こうした遺伝的アルゴリズムと基本的に同様な着想をとっている.グループとし
ての解や決定を求めない「非合意形成的」なシステム(メンバーが自律エージェントとして自由に振舞えるシステム)をつくることで,「適者」が合意過程の中
に埋没する(=同調/服従する)可能性を減らし,「適者」の学習内容が保持され,次第に伝搬していく可能性を高めようという着想である.この着想は鋭い.
しかし,そこで「適者が選択される」メカニズムは実際にはどのように保証されるのだろうか.
(pp.65-66)
以下のアイディアについての他のアプローチとしては,SSMに代表されるような権力構造下でも有効に働く方法論を用いた介入を行うことで,その権力構造を和らげて,social contextに依存しない”相互依存構造”をつくってしまうアプローチがありそう.
ただこの場合の関心は,そういった介入を伴うものではなく,ツールやテクニックのレベルでのものだとも思う.でも,それは(そのレベルで完結させることは)なかなか難しいのでは.
遺伝的アルゴリズムにおいては,そうした「自然淘汰」メカニズムは,アルゴリズム自体に初めから組み込まれていた(プログラマがそういう世界のあり方をつ
くった).一方,社会的な協同場面に,この意味での「自然淘汰」,「適者選択」のメカニズムは内在的に組み込まれていない.とすれば,楠・佐伯
(1999)の考える「非合意形成的協同学習」は無条件では成立し得ず,グループウェアによる支援を含め,「適者」が選択されるための,何らかの構造的・
制度的な保証を必要とするはずである.「非合意形成的協同学習システム」の可能性は魅力的である.しかし,そうしたシステムが実際に機能するかどうかは,
権力関係や利害関係のあり方を含め,「適者選択」を可能にするメンバー間での「相互依存構造」をどのようにつくりだすかの大きく依存するのではないか.こ
の意味で,もし工学的な介入先を,メンバー間での「相互作用」のレベルに直接に向けるとしたら,それはかえって迂遠な方向のように思われる.「協同学習」
の実をあげる具体的な相互作用のあり方は,相互依存構造に本質的に規定されると考えるからである.
(pp.66)
Posted by ysk5 at February 11, 2005 10:18 PM