« 主な変更点 | Main | 山本(2002) »

February 14, 2005

中西et al.(2003)

中西 大輔,亀田 達也,品田 瑞穂.”不確実性低減戦略としての社会的学習---適応論的アプローチ---”.心理学研究,Vol.74,No.1,pp.27-35,2003.

ずびびっと,サーベイをかけたときにひっかかった論文.
まったくもってダイレクトには僕の研究にはかかわってこないのだけど,関心の間口は広くとっておいたほうがいいであろうということで,読んだのでメモ.

当たり前のことなんだけど,結構忘れてしまいそうなこと.
平均のマジックというやつだ,よくある.
けれど,この場合においては,アプローチの限界を示しているともとれる.さらにミクロな分析を可能にするには,たとえばABMのような個体の振る舞い自体を観察できるアプローチを採らないと駄目だろう.

それでは,こうした均衡状態の実現は,具体的にはどのような形で生じるのだろうか.本研究における仮説導出の背景となった進化
ゲーム理論によれば,均衡を形成する社会状態に”多型(polymorphism)”と”混合戦略(mixed
strategy)”の2つの可能性を考え得る(Maynard Smith,
1982).ある母集団で戦略Aと戦略Bが比率pと1-pで均衡していたとしよう.常に戦略Aを採る個体と常に戦略Bを採る個体がこれらの均衡比率で母集
団に存在していたとしても(多型),全ての個体が戦略Aを確率pで,戦略Bを確率1-pで使い分けていたとしても(混合戦略),この均衡は成立する.いず
れの過程でも,そのグループにおけるA戦略個体の平均比率はp,B戦略個体の平均比率は1-pとなる.中西et al.(2003)pp.32

この論文のメインリザルト.
この場合,形式知を対象にして研究を行っているけども,もし仮に暗黙知を対象としたら,どうなるのだろうか.暗黙知のように伝達に時間がかかり,正確に伝達されると保証されないときは,この研究での前提条件が崩れるために,下の議論は成り立たないだろう.

環境変動の存在する状況下でも,もし個人的学習(情報探索)にかかるコストが低いのであれば,Henrich &
Boyd
(1998)のモデルが示すように,社会的学習(特に多数派の意見を重視する同調バイアス)は情報の不確実性を低減する上で有効に働く.しかし,個人的学
習のコストが無視できないほど高ければ,情報の安定供給に関するフリーライダー問題が生じ,供給者たる情報探索者(個人的学習者)と,社会に流通する情報
を消費するだけのフリーライダーの間でタカハト型の均衡が生じることが理論的に予測できる.本研究は,進化ゲーム理論に基づく以上の予測の正しさを実験に
よって確認した.
中西et al.(2003)pp.33

Posted by ysk5 at February 14, 2005 10:45 PM