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February 15, 2005

Gilbert and Troitzsch(2003)

Nigel Gilbert and Klaus G. Troitzsch(著),井庭 崇,岩村 拓哉,高部 陽平(訳).「社会シミュレーションの技法」.日本評論社,2003年.

社会科学領域におけるシミュレーションについての紹介書兼入門書.
手法としてはSystem Dynamics,Micro Simulation,待ち行列モデル,Multi-Level Simulation,Cellular Automaton Model,Multi-Agent Model,学習と進化のモデルの7つ.

当該分野についての網羅的で体系的な本は有用だ.
枝葉をたどって,いろいろな知識を吸収できるので.

シミュレーションモデルを理論の発展に使うという研究のやり方について.
まさに僕の研究はそれなのだけど,基本的にシミュレーションというと予測のためのものと考えるハードなおかたが多いので,working paperとかでもこれを参照しておくことにする.


人々がどのように相手を探すかに関する理論があるならば,私たちはそれを手順として表現することができ,最終的にはコンピュータ・プログラムにすることが
できる.プログラムは,手順を文章の形で表現するよりも正確なものになるので,理論を洗練するのに役立つ.つまり,「理論を発展させるための方法」とし
て,シミュレーションを用いることができるということである.
Gilbert and Troitzsch(2003) pp.3

創発の定義.
これはまんま,システムの要件(備えるべき性質)としてあげることができると思う.
これも理解されていなくて,”創発って何?”という冗談なのか,試しているのか,挑発しているのか分からない質問が来そうなのでメモ.


創発の概念は,複雑系理論からでた最も重要な考え方のひとつである.創発は,ある階層における要素どうしの相互作用が,ほかの階層における異なるタイプの
要素を生じるときに起こるとされている.より正確に言うと,ある現象を説明する際に,それらの下位の要素の振舞いを説明するためには必要でなかった新しい
種類の説明が必要とされる場合に,その現象は創発的であるというのである.
Gilbert and Troitzsch(2003) pp.12

Posted by ysk5 at February 15, 2005 08:38 PM