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March 16, 2005

ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち

Paul Graham(著),川合 史朗(監訳).「ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち」.オーム社,2005年.

Lispの偉いひとのエッセイ集.

科学とハックの違いについての記述をメモしておく.

確かに新規性さえあれば,というはなしはよくあると思う.
さいきん思っているのだけど,手法や方法におけるあたらしさではなくて,例えば新しい価値を創出するという意味でのあたらしさは,新規性はいわないのだろうか.
これは有用性か.

何か美しいものを創るということは,しばしば既にあるものに微妙な改良を加えたり,すでにある考えを少しだけ新しい方法で組み合わせたりすることによってなされる.この種の仕事を研究論文にするのはとても難しい.
pp.25

科学はdisciplineなので.
上手になることから始めてオリジナルになってゆく,という表現は,まさにそのとおりだと思う.
というか,オリジナルであるということに気付くためには上手になるしかない.
ハッカーがハックしながら学ぶという事実は,ハッキングと科学がどれだけ違うかということを示すもうひとつの手がかりだ.科学者
は科学をしながら学ぶのではない.実験と課題をこなしながら学ぶのだ.科学者はまず完璧な仕事から,つまりだれか他の人が既にやったことを再現することか
ら始める.そうしているうちに独自の仕事ができるレベルに達するのだ.一方,ハッカーは最初から独自の仕事をする.ただ最初は下手くそだろう.ハッカーは
オリジナルから始めて上手になってゆく.科学者は上手になることから始めてオリジナルになってゆく.pp.30

ふむ.
よくあるためにオリジナルになるというのと,オリジナルであるためによくなるということか.
ここでいう頂上は”よい”ということか.

デザインとリサーチの違いは,新しさ対良さの問題だと言えると思う.デザインは必ずしも新しくある必要はないが,良くなくてはならない.リサーチは必ずし
もよくある必要はないが,新しくなくてはならない.この2つの道は頂上で一緒になると私は思う.最高のデザインは新しいアイディアでもってそれまでのもの
を凌駕するだろうし,最高のリサーチは新しいだけでなく,解くに値する問題を解くのだ.したがって私たちは究極的には同じ方向を目指しているが,別々の方
向から近づいていると言えるだろう.
pp.230
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Posted by ysk5 at March 16, 2005 12:15 PM