« 夏と花火と私の死体 | Main | 炊飯器が我が家にきました »

March 25, 2005

万物理論

グレッグ・イーガン(著),山岸 真(訳).「万物理論」.東京創元社,2004年.

いわゆる正統派でハードなSFです.
科学ジャーナリストが万物理論(Theory of Everything)を発表する科学者に取材をする.
発表される学会中にジャーナリストと汎性と科学者を中心に,なんかいろいろとおこります.
でも,多分,結局は,これも愛の物語.

万物理論とDistressとがはなしを駆動させて,そのなかでの会話における各論の面白さを引き出していると思った.
ぼくはこの手のを読むと,話の本筋よりも各論の方に興味が行ってしまうタイプなので,その辺を中心にメモ.

2つのHワード.

ロークはぼくのほうをむいて,「意見を異にしたり,理解できなかったりする人々に向けてあなたができる,もっとも押しつけがましいことはなんですか?」
「さあ.なんですか?」
「その人々を治療すること.それが最初のHワードです.健康」
pp.99

「それで,もうひとつのHワードはなんなんですか?大きいほうは?」
ロークは首を傾げて,いたずらっぽくぼくを見た.「ほんとうにおわかりになりませんか?ではヒントを.論争に勝とうと思ったら,考えうるもっとも知的に怠惰な方法とはなんでしょう?」
「答えをいってほしいんですが.なぞなぞは苦手なので」
「論争相手が”人間性”を欠いている,と主張することです」
pp.100

魔法の金庫という表現はいいな.
たぶん魔法の金庫を求める気持ちの強い人が信仰するのだな.
さらにいうと魔法使いを求めているのかな,魔法を使われたいのだな,きっと.

マイクルは静かに笑った.「そして,失っていちばん惜しくないのが信仰だ.いったいなぜ,わたしがなにかを失ったなんて思うんだ?わたしは自分が価値を置
いているものが,”神”という名の---宇宙の外側,時間の外側,わたし自身の外側にある---魔法の金庫にしまいこまれているというふりをするのをやめ
た.それだけのことだ.わたしはもう美しい嘘がなくても,自分のくだしたいように決断をくだし,自分でいいと思える人生を生きようとすることができる.も
し真実が,そうしたことを不可能にするものだったら……そんな決断や人生はそもそも手にはいらないものだったということだ.pp.375

Posted by ysk5 at March 25, 2005 11:28 AM