« 読むURL | Main | 解釈フリーの危険性の回避のための方法論の必要性 »

April 13, 2005

学習の表現としての進化の過程における時間概念

例のごとく酔っぱらっていますけど,ちょっとまとめておきたい.
# きょうはこれについて考えたかったので,ぬみをおことわりしたのです

中間発表の際にもふれたことだが,社会科学の文脈で進化的アプローチを適用するとき,進化の過程における時間概念が問題になると思う.

たとえば,レプリケータダイナミクス等を実装した進化ゲームでのタカハトゲームを考えてみるとき,期 or ステップの進行にしたがって,戦略の人口比に違いが出てくるという分析がされているけれど.
実はこの分析枠組みには大きな仮定がなされている.
それは期ごとにプレイヤが同時に必ずある種の学習(認識の変更)にしたがって意思決定を行うことである.

この仮定はいわゆる進化的アプローチのアプローチ自体に内包される暗黙の制約から来ている.
GAを例にいうと,そのアプローチの制約から,それぞれの個体は世代ごとに同時に評価される必要があり,また遺伝的操作を同時になされる必要がある.またレプリケータダイナミクス等を実装した進化ゲームでは1期前の集団の人口比が学習のために必要なので,学習において同期性を仮定する.
これらのプロセスを学習ととらえ,学習を通じて進化プロセスが表現されるとするとき,果たしてこの仮定は自然で妥当なものであろうか?
また,進化ゲームのような枠組みでの分析を行うとき,期という時間概念が与えてくれる含意はどの程度存在するのであろうか?
もし含意がないとするならば,含意を得るための枠組みはどうあるべきであろうか?
これらが関心の対象であり,問題の所在であると考える.

とくに進化的手法をとりいれるとき,その動学的側面についての妥当性が認められなければ,結果についての妥当性それ自体も,根幹から見直す必要があると思う.
たとえばレプリケータダイナミクス等を実装した進化ゲームにおいて期とはどういった概念であろうか?
レプリケータダイナミクス等を実装した進化ゲームでの期とは,意思決定単位ステップとしての,断続的で離散的な,非時間的な概念ではないか.

このように考えるとき,意思決定単位ステップが問題になる.
つまり,意思決定(および学習)がどのような時間概念を持ちうるのかということだ.
しかし,進化ゲームや現在の他の社会科学における進化的アプローチは,それに対する解を示すことができていない.
時間概念を持ち得ない意思決定は含意の面で弱みを持つ.
学習の動的側面や結果としての分析を行ったとして,それを現実の状況においてどのように解釈すればいいのかが,指針としても示すことができないからだ.

たとえば500ステップののちにある結果に収束したときに,1ステップがどういう時間概念なのかが明らかでないときに,500ステップ後の結果はどの程度の含意を与えうると言えるだろうか?
1ステップがどのくらいかかるものなのか,分からないなか,正しいであろう含意をどのようにして,この分析から得ることができるのだろうか.

と書いたとこまでで,時間切れ.クソして寝ます.
なんだかんだいって脳内整理には役に立ったので,それはそれでよし.
続きはあした書くかもしれないし,書かないかもしれない.
わたしの脳髄の調子いかんなところです.

.systakaなかたで,このへんmajorなかたへ.
特に進化ゲームについて少し調べてみたいので,ナイスなペーパーなり本なりがありましたら教えてくださいな. # メイナード・スミス読め!で終了かもしれないけど

(追記@050414)
いわゆるシンプルでプリミティブな進化ゲーム自体について誤解していたので,ちょっと表現を変更.追記部分は太文字にしておいた.

Posted by ysk5 at April 13, 2005 11:02 PM

Trackback Pings

TrackBack URL for this entry:
http://ysk5.s58.xrea.com/mt/mt-tb.cgi/466

Comments

長文失礼します。
僕はウェイブルで勉強しましたが、
ゲーム理論と進化ダイナミクス―人間関係に潜む複雑系 相互作用科学シリーズ
生天目 章 (著)

がいいと思われます。

 後ちょっと気になることがあるのでコメントです。
 今からするコメントに間違いがあったらすみません。またコメントすること自体が間違っていたらもっとすみません。

 基本的な(拡張のされていない)進化ゲームにおけるダイナミクスは、連続的であり、時間(特に期)の概念や、個人の学習の概念はないと思われます。

 進化ゲームの枠組みをもとにこのような議論を展開するに当たっては、状態遷移モデルを使ったりして(他の方法もあるかもしれません・・・)、ダイナミクスを再定式化する必要があると思われます。

 GTさんの進化ゲームのダイナミクスに対する解釈はおそらくD口先生がRDの拡張として提唱したSLD(Social Learning Dynamics)の概念に近いと思われます。
これは、"複雑系としての経済学"のほうにのっています。

青二才のくせに生意気言ってすみませんでした。GTさんの書き込みに対し、誤解している点があれば、明日(今日!?)教えてください。そして一緒に勉強しましょう。

P.S. このコメントをBossがごらんになられる可能性を考えただけで夜も眠れません。

Posted by: hizakkozou at April 14, 2005 02:26 AM

コメントありがとです.

>今からするコメントに間違いがあったらすみません。またコメントすること自体が間違っていたらもっとすみません。

ともにそんなことはないので,ありがとう.

>基本的な(拡張のされていない)進化ゲームにおけるダイナミクスは、連続的であり、時間(特に期)の概念や、個人の学習の概念はないと思われます。

なるほど.
プリミティブな進化ゲーム自体はESSの概念のみをもつのか!

>進化ゲームの枠組みをもとにこのような議論を展開するに当たっては、状態遷移モデルを使ったりして(他の方法もあるかもしれません・・・)、ダイナミクスを再定式化する必要があると思われます。

ぼくは暗黙のうちにRDとかの進化のダイナミズムを内包した手法について書いていたみたいです.
# よかった,ここでのドラフトで

>GTさんの進化ゲームのダイナミクスに対する解釈はおそらくD口先生がRDの拡張として提唱したSLD(Social Learning Dynamics)の概念に近いと思われます。
これは、"複雑系としての経済学"のほうにのっています。

これってば,ここでの問題関心に対しての解決がなされているでしょうか?
ま,読めば分かるか.

>P.S. このコメントをBossがごらんになられる可能性を考えただけで夜も眠れません。

ボスはそんなに高い頻度でごらんにはなっていないと思うので,ご心配なく.

Posted by: ysk5 at April 14, 2005 10:06 AM

Post a comment




Remember Me?