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April 17, 2005
藤本(2000)
藤本 隆宏.”実証分析の方法”in 方法としての進化,pp.51-84,進化経済学会・塩沢 由典(編).シュプリンガー・フェアラーク東京,2000年.
いや,藤本センセ,こんなすごいテキストをお書きになるかただと思っていませんでした.
Chattoe(1998)でも同様に進化的手法についての検討されているような気がするけど,断然日本語のほうが分かりやすいので,ありがたい.
このような検討のしかたは実に自然であるが,しかしあまりみられない.
ある方法論を使うときには,それ自体の理解がまずあるか利用とともになされていくべきであると思うけど,実際は利用が先行してしまうケースがままあると思う.
ぼくは砂上の楼閣の建設作業員よりかは,その砂を潤いのある大地にしたい,という気持ち.
また手法のvalidationの取り方において,生物進化論でいわれているのだから,というある種の同型性についての盲目な仮定が,奇妙な説得力をもっているということは,問題であると思う.
その同型性自体に対する検討はやっぱり必要であろう.
まず,実証的な社会科学に適用される「進化」概念が,何を意味し,また何を意味しないか,筆者なりを基本的な考え方を示すことにしよう.出発点として,社
会システムに関する進化概念の意味するものに関して,以下の認定基準を想定したい.(1)「進化」という言葉をわざわざ使う限り,それは単なる「変化」と
いう以上の内容を持つべきである.(2)もともと生物を対象に発達してきた理論体系なのだから,社会現象に対する進化論は,現代における生物進化論と少な
くとも基本的な論理構造を共有すべきである.(3)そうはいっても,生物の体系と社会体系は当然異なるのだから,生物進化論の通説をそのまま社会現象の進
化論に流用すべきでない.
藤本(2000) pp.54-55
ここでは機能論とはある種の規範的でフォーマルな振舞いの仮定からきていて,発生論はそのとおり振舞いの発生的な仮定から来ていると思う.
自分のアプローチについて言及すれば,規範的で目的論的事前合理的なシステムがどのように発生するのか,その過程を分析することでその過程やシステムの理解を深めることが必要であるという立場か.
第二に,システム自身あるいはシステム創造者による「存続の意図→機能のデザイン→構造のデザイン→構造の実現→機能の実現→存続の実現」という目的論の
構図,つまり事前合理的なシステム・デザインの存在が推定されるケースがある.この場合,発生論といっても,単に前述の機能論(構造→機能→存続)の逆関
数にすぎないので,わざわざ発生論を付け加える意味はあまりない.例えば合理的な製品開発活動は,構想→機能設計→構造設計→構造→機能→市場での生き残
り,という経路を辿るが,かりにあるシステムが,このような整然としたデザイン活動の結果生まれたと信じる理由があるのならば,機能論と別に発生論を持ち
出す意味はない(図2.3b).
藤本(2000) pp.77-78
Posted by ysk5 at April 17, 2005 09:05 AM
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