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April 16, 2005
塩沢(2000)
塩沢 由典.”進化経済学の課題”in 方法としての進化,pp.29-50,進化経済学会・塩沢 由典(編).シュプリンガー・フェアラーク東京,2000年.
進化経済学がどういう存在であるか,つまりわたし(進化経済学)がわたし(進化経済学)であるということを知るための論文.
進化経済学の方向性や手法,課題について検討している.
ここでの選択とは選択状況,その選択の考えられているよさの表現として使われている.
たしかに,(ほぼ完全合理的な)予想に基づく選択から,その選択の確度の保証されない実績に基づく選択へと,概念レベルでの大きな変化が新古典派とのパラダイムの間で存在すると思う.
ひとつの商品の存続・廃止には,このように多数の人々の判断とその集計機構および繰り返しなされる存廃の判断が関係している.こ
れは,けっして事前の評価,予想に基づく選択ではない.事前選択に対して,これを「事後選択」と呼ぶことができようが,事後選択という概念にはすでに指摘
した基準点のあいまいさという難点がある.「事後選択」という表現が適切でなければ,「実績に基づく選択」と呼んでもよいだろう.このとき,事前の選択は
「予想に基づく選択」と呼び変えることができる.新古典派では,選択をもっぱら予想に基づくものとしてきたが,選択の対象を一回限りの行為から繰り返され
るパタンに転換するとき,まったく新しい選択のメカニズムが浮上してくる.それが「実績に基づく選択」である(塩沢由典,1998b).経済の進化過程に
おいては,選択されるものは複製子であり,それを選択対象と考えることにより,進化経済学は「選択」概念そのものを変えているのである.塩沢(2000) pp.37-38
複雑な状況において,たしかな知の獲得が危ういなかで,それでもどうにかしてよりたしかな知の獲得を目指していく,というのがコンピュータ・シミュレーションによる研究法の根本の思想にあると思う.
それはコンピュータ・シミュレーションの結果がひとつの現実として存在しうるという意味での,知でありうるという了解性から展開されると思う.
ので,この出発点が理解されていないとき,このアプローチはおはなしにならないので,手法自体の理解や了解のための記述というのが重要になってくるよなと思った..
コンピュータ・シミュレーションは理論と実験に次ぐ,第3の科学研究法と見なすべきものである.それは進化経済学のための新しい枠組みを提示している.こ
のようなシミュレーションには,正確には再現不可能なものもある.実験結果からあるストーリー(話の筋)が得られる場合でも,そのようなストーリーがどの
くらい一般性をもつものかは,たしかな形では主張することができない.出発点での諸変数をさまざまに変えることにより,ある確率でそのような事情が生起す
ることが推定されるに止まる.しかし,コンピュータ・シミュレーションで得られた結果には,普通言語による話の筋の叙述すなわちナラティブに適したものが
多く,形式理論からは得られないさまざまな知見が得られる可能性がある.
塩沢(2000) pp.46
Posted by ysk5 at April 16, 2005 08:42 AM
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