« つぎ買ってくるやつ | Main | ノルウェイの森(上) »

May 07, 2005

自分の研究についてわかりやすく説明してみる(3)

第3回.
きのうのはやさしくないな.きょうはやさしさをこめていきたい.

でも前提知識の続き.

コンティンジェンシー理論の限界については自分の研究についてわかりやすく説明してみる(2)でもふれているが,この理論を超えるためのアプローチとして,組織学習によるもののほかに,組織サイバネティクスとよばれるアプローチが存在する.

まずサイバネティクスという言葉を説明したい.Dictionary.comによれば,

The theoretical study of communication and control
processes in biological, mechanical, and electronic systems, especially
the comparison of these processes in biological and artificial systems.http://dictionary.reference.com/search?q=cybernetics

とある.
ざっくり訳せば,サイバネティクスとは生物システム等の比較をもちいたコミュニケーションと制御のプロセスについての理論的研究のことを指すとしている.
ここでは,生物システムのメタファー(例えば脳とか)をもちいて,そのしくみと同じような形で制御対象について考えていく理論であると受けとってもらって結構だ.

つぎに組織サイバネティクスについて説明したい.
組織サイバネティクスはサイバネティクスから発展した,組織(主に企業)のためのサイバネティクスである.
つまり,組織がいいパフォーマンスを実現する(これを生存可能:viableであるという)ために,どのようなコミュニケーションや制御が行われればいいのかを考えるものだ.
組織サイバネティクスでは,これを実現するために,組織の本質的な機能と情報の流れを考える.
いい組織においては,

  1. 実際に仕事を実行する機能
  2. 仕事の実行を監視する機能
  3. 組織の資源を配分・調整する機能
  4. 組織の外部を観測して,内部に伝える機能
  5. 組織の長期的な目標を定める機能

の5つの機能が含まれているべきで,それらの機能がうまく働き,機能間において情報がちゃんと伝達されることで,組織はいいパフォーマンスを実現できると
する.
組織学習はプロセスからパフォーマンスの向上を保証したが,組織サイバネティクスは組織の構造を機能の面から整理して,その機能の働きを調査・改善するこ
とで,パフォーマンスの向上を保証する試みである.
この考え方は,表層の組織図や階層図をみるという組織の見方とは異なった,より本質的なレベルでの議論をするための視座(パースペクティブ)を与えてくれ
る.
パフォーマンスの悪い組織において問題なのは,組織の配置や階層がおかしいことなのではなく,組織の機能がうまく働いていないことである.
であるから,組織の管理者(社長さんとか,リーダーとか)は組織の機能がうまく働くように,組織の配置や階層を決定すべきであるし,さらに,組織の配置や
階層を決定することが重要なのではなく,その組織の配置や階層によって組織の機能がうまく働いているかどうかが重要である.
これがきょうのおはなし.
コンティンジェンシー理論が適用できないときに,組織の本質的な機能に着目することで,その機能がうまく働くように調査・改善することによってパフォーマ
ンスの向上を目指す試みがあって,それが組織サイバネティクスですと.
コンティンジェンシー理論を基盤・仮定としてもちいつつ,組織学習と組織サイバネティクスという2つのアプローチが発展してきました,という歴史的流れ.

Posted by ysk5 at May 7, 2005 10:03 PM

Trackback Pings

TrackBack URL for this entry:
http://ysk5.s58.xrea.com/mt/mt-tb.cgi/527

Comments

Post a comment




Remember Me?