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May 10, 2005
自分の研究についてわかりやすく説明してみる(4)
ひと区切りついたので再開.
これまでに,コンティンジェンシー理論による組織と環境との適合概念と,この理論的限界を乗り越えるアプローチとして組織学習と組織サイバネティクスの2
つを説明した.
きょうは,この歴史的流れの続きを説明したい.というか,あと3回くらいはずっと前提知識の説明を続けるので,そのつもりで.
組織学習と組織サイバネティクスにはともに,弱みが存在した.
プロセス表現により組織の能力の向上のしくみを表すことができる組織学習には,組織を機構的に構造的に捉えるための枠組みが欠けていた.そのため,たとえ
ば組織が具体的にどういったものであるか?どのように組織の改革にもちいるべきかが明示されていないために,理論的説明力はともかく現実的問題解決のため
のものとしては,それのみでは十分であるとはいえなかった.
一方,組織の構造を機能の面から整理して,その機能の働きを調査・改善することを可能にする組織サイバネティクスには,組織のダイナミクスを記述する枠組
みが存在しなかった.そのために,組織がどのように振舞い,パフォーマンスを向上させていくのかを表現することができないので,これもまた,組織というシ
ステムの理解はともかく現実的問題解決のためのものとしては,それのみでは十分ではなかった.
そこで,両者の欠点を補い,長所を活かすことを目的として,両アプローチを統合してひとつの理論としてまとめようとする動きが出てきた.
この試みが成功すれば,組織を能力向上のプロセスというダイナミクスの面と,組織を構成している機能の働きを考えることによる構造の面の2つから捉えるこ
とが可能になる.
これにより,組織という複雑な存在をその動きかたと動かしかたから理解することが可能になるという期待をもてる.
と,いい面ばかりあるのだけど.
そうはなかなかうまくいかなくて.
概念レベルではそれが可能にはなっているのだけれども,実際にその振舞いや機構を可視化したり,分析するためには,シミュレーションをもちいた研究が必要
となってくる.
しかし,いまのところそのような研究は少ないという.
きょうはここまで.
まとめると,組織学習と組織サイバネティクスを相補するように統合するアプローチがあらわれてきたが,その本来の意図を実現するためにはシミュレーション
をもちいた研究が必要になることがわかった.しかし,現状ではそのような研究は少ないと.
なんとなく問題点が見えてきたと.
Posted by ysk5 at May 10, 2005 10:31 PM
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