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June 12, 2005
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影 躍進するIT企業・階層化する労働現場
横田 増生.「潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影 躍進するIT企業・階層化する労働現場」.情報センター出版局,2005年.
書評等で興味を引かれたので読んでみた.
著者としては,希望格差社会的な側面を伝えたいらしいのだが,そのあたりについてはいまいち感じるところがなかった.
アマゾンという”黒船”は今,静かに,しかし着実に日本の出版業界を変質させている.そしてその”顧客第一主義”を支える物流センターは,台頭するニューエコノミーの裏側で劣化していく日本の労働環境の未来図を指し示していた.アマゾンのアプローチは構成員がアウトプットを規定するのではなく,システムがアウトプッ
pp.9
トを実現するようにしたところに,すばらしさがある.# マネジリアルな意味で
そこにおいてはシステムを実行する構成要素は人間である必要はなく,コストの面から人間を使っているだけなので,本来的には人間的な労働環境はシステムを
構築する人間の側にあるのです.
こんな事書くと怒られそうだけど,しょうがないです.
たしかにクリエイティブなことをしたい人には地獄でしょう.でも,何も考えたくない人ってのもいると思うのです.指示されたい人もいると思うのです.そう
いう人が,嫌だと思って辞めるまでに就く仕事がアマゾンの物流で,そういう人でも最大のアウトプットを出せるようにしたところはやはりすごいといわざるを
得ないと,ぼくはそう思います. # 僕はそういう人たちのお仕事に対して,当然,感謝しています.
現代人は,アマゾンに代表される熾烈な国際競争を勝ち抜くニューエコノミーの恩恵を受けている.しかし,さらに細分化されていくだろうこの労働格差とくり
返される競争は,果たして人を幸福にするのだろうか.
<ワンクリック>の向こう側では,その要求に応えるために,たしかに誰かが働いている.ネット社会の便利さを享受することが,IT企業の舞台
裏で働く人々の自尊心を損なうことと無関係ではなく,ひいてはわれわれの生活基盤である社会全体を不安定にしていくかもしれない.われわれは,ときに立ち
どまり,そのことを今一度思い返してみる必要があるのではないか.
ネット上で日本のニュースを眺めれば,ニューエコノミーの代表ともいえるIT企業の動向が,連日連夜世間を賑わせている.それらの企業によって今後,日本
経済がたとえ”復活”したとしても,それと引き替えに多くの人から”希望”が奪われるのなら,それを豊かな社会とは呼ぶことはできないのだから.
pp.281
番号に従って本を探してくるだけという子供にもできそうな仕事に,大の大人が働きがいを感じることは難しい.だから仕事がアイデンティティとはなり得ない.そうなるとこの職場に愛着を持つことは難しい.これを読んでアマゾンでものを買わなくなる人は,パンを食べちゃダメです.
pp.120
モダンタイムスもびっくりの山パンの工場だって,こんな感じでしょう.
ただ,もしアマゾンの物流とかで,明らかにオーバースペックな人間が働かざるを得ないような状況が起きたとしたら,それは問題だ.
でも,そのようなはなしはなかったと思う.
ともあれアマゾンには納期予測を精確にして,納期のぶれをもっと小さくしていただきたい.
あと為替レートでせこい値上げをするなといいたい.
Posted by ysk5 at June 12, 2005 08:05 PM
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