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July 03, 2005
岸田(2000)
岸田 民樹.”状況適合理論:回顧・現状・展望”.組織科学,Vol.33,No.4,pp.9-18,2000.
そのタイトルが示す通り,コンティンジェンシー理論の歴史的流れと現状,そして展望を述べている.
”環境”という言葉は”システム”という言葉と同じくらいにレイプされているので,正確な理解のためにはしっかりとその定義を示すことが必要になると思った.
文脈に依存する言葉は,文脈に依存しないようにする必要がある.
どのような状況要因を「環境」と考えるかは,さまざまであった.Emery&Trist(1965)は,環境と組織の相互作用を4つに分類した.(1)組織内部の相互依存状態,(2)外部環境から組織への影響,(3)組織から外部環境への影響,(4)外部環境それ自体のプロセス,である.したがって,環境は次の3つのレベルに分けることができる.第1は,内部環境(組織風土,コンテクスト)である.第2は,外部環境のうち該当組織と関連をもつ特定環境(課業環境,組織セット,活動領域)である.第3は,組織と環境との交換状態を全体として規定する全体環境(社会的背景,社会環境)である.
岸田(2000) pp.9
ここで分類している3レベルに対応して,研究を類型化することができるとしている.
上述の3つの環境レベルに対応して,状況適合理論は,第1に,内部環境のコンテクスト(特に技術および規模)と組織構造(専門化・公式化・標準化からなる活動の構造化,権限の集中,形態)との関係を問題にする研究と,第2に,特定の環境のうちの課業環境の不確実性(情報の明確さの欠如,結果についてのフィードバック期間の長さ,一般的な因果関係の不明確さ)と組織過程(意思決定,リーダーシップ,コントロール,統合・調整,コミュニケーション,コンフリクト解決,業績評価・報酬体系,部門間パワー)との関係を問題にする研究とがある.これらは上述のEmery&Trist(1965)の,内部環境と特定環境にそれぞれ該当する.したがって第3に,全体環境のレベルでの状況適合理論(たとえば文化と組織,具体的には日本の文化と日本的経営の関係)を考えることもできる.ただし,いずれにしても,もっぱら環境から組織への影響を扱っているという特徴がある.
岸田(2000) pp.9
Childによるコンティンジェンシー理論批判について.
とくに変革のプロセス,ある適合状態から次の適合状態へのプロセスについて触れられていないことはメモっておきたい.
ただし,Childの批判は代表的であり,注目すべき論点を含んでいる.彼によれば,状況適合理論は,組織デザインを有力な状況要因に適合させることが業績を高めるという確たる証拠を示し得ていない.状況適合理論は状況要因を「神から与えられた」制約と見なしている(環境決定論).しかし第1に,独占的な地位にいる企業は,状況要因を操作したり無視したりして,業績を上げることができる.第2に,多様な状況要因が同時に存在する場合には,組織デザインに重大なジレンマを来す.したがって管理者の選択にしたがって,組織デザインの諸要因間の整合性を維持する方が重要である.Child(1977)は,北米の航空会社の実証研究を行い,同じ好業績の企業でも組織デザイン(時間志向の長短,集権-分権,コンフリクト処理の公式化の程度)が対照的であることを示した.第3に,状況適合理論は,ある適合状態から次の適合状態への移行のプロセスには触れていない.
岸田(2000) pp.14
コンティンジェンシー理論って環境決定的で,ジャクソン大先生なぞにいわせると,この考え方は"slavish"であるとされてしまうけど,以下のような反論がありうると.
「適応(adaptation)」という言葉は,英語では「受動的」なイメージをもつ.これに対して,環境操作戦略は「情報的に環境に働きかける」という意味をもつ.しかし,(1)構造変動という段階的・不連続な変化である,という意味で,(2)相手を変える(環境操作戦略)より自分を変える(組織デザイン)方が,「自己変革をおこなう」という意味で,積極的であるとも言える.
岸田(2000) pp.18
Posted by ysk5 at July 3, 2005 11:10 AM
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