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April 03, 2005
ラッシュライフ
伊坂さんに恋をしました.
うまいと思うのは構成の緻密さと,タイトル,随所に見られる伊坂節.
まとめてみる.
泥棒,独立を阻まれた画商,精神科医,失業者,強欲な画商とそれをパトロンにする画家.
これらの群像劇が,ラッシュライフをキーワードに物語の終わりを目指して収束していく.
lash, lush, rash, rush?
泥棒は人生を語り,画商は離婚を決意する.精神科医は途方に暮れ,失業者は強盗になる.強欲な画商と画家は呆然とする.
それぞれの物語の収束先はエッシャーの騙し絵.
ラッシュライフ,それはゆとりのある人生.
前向きなあきらめと,静かな期待.
といった感じか.
この話もよくでてくる,人生エスカレーター理論だな.
「人生に抵抗するのはやめた.世の中には大きな流れがあって,それに逆らっても結局のところ押し流されてしまうものなんだ.巨大な力で生かされていること
を理解すれば怖いものなどない.逃げることも必要ない.俺たちは自分の意志と選択で生きていると思っていても,実際は『生かされている』んだ.そうだろ
う?」
pp.127-128
物語で出てくる肩肘張ったかんじの人物が,この考えにいたって,前向きなあきらめの境地に至り,救いを見出す,というのが気持ちがよく,すがすがしい.
冬の朝,寒さの中から日の光りが差し込んでくる,そんなすがすがしさ,気持ちよさだ.
この本とKeith JarrettのCountryかThe Journey Homeがあう.
Posted by ysk5 at April 3, 2005 11:56 AM
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